PL判例事例検討「ビル外装用ガラス破損脱落事件」

PL事例研究WGでは、PL判例を工学的見地から問題の解析を行っている。その一例を報告する。

事件概要

31階建のビルの28階の外装用ガラスの1枚が破損、脱落して落下したのはガラスの欠陥によるものだとして、ガラス製造会社に対しては不法行為又は製造物責任に基づき、ガラス販売会社にたいしては欠陥のあるガラスを供給しないよう助言すべき注意義務に違反したとして、それぞれ損害賠償請求を求めた事案において、ガラスの破損原因等の証明が不十分であるとして請求が棄却された。

原告

建築材料の製造、販売を目的とする株式会社

被告

板ガラス製造販売業者及び板ガラス販売輸入業者

事件番号

東京地裁(平17(ワ)16509号)

主文

原告の請求を棄却する。

工学的検討

倍強度ガラスの製造法、応力特性、製品欠陥、PLについて議論した。争点の一つは、高層ビルに設置された倍強度ガラスが破損、脱落した原因が、本件倍強度ガラスが欠陥品であったか否かである。倍強度ガラスはフロート板ガラスの約2倍の耐風圧強度、熱割れ強度を持つ。JISR3222規格の表面圧縮応力値範囲に対して本ビルの倍強度ガラスの表面圧縮応力の測定値は規格範囲に適合しない物が含まれていたが、それが直ちに製品として欠陥があるとまではいえないということであった。

著者

田辺隆一
技術士 化学部門・総合技術監理部門

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