外国製高級車自動変速機構等誤作動死亡事件
事件概要
2004 年外国製高級スポーツカー購入後、初 ドライブの際、坂道で AT 車のセレクトレバーをP位置 に入れ、駐車ブレーキを踏んで停車したところ、降車後、 車は一時的に停車を維持した後に、後退し始めた。これを 追いかけた運転者 A は車とガードパイプの間に挟まれ死 亡した。A の相続人 X は、車輸入業者 Y に対し、事故発 生が AT など車の欠陥に拠るとし、PL法3条に基づき、 A の逸失利益の損害賠償を請求し提訴した。
判決
判決は、警察の見分と再現実験や X・Y 双方が行っ た実験結果や専門家による鑑定に基づき、AT のパーク・ ロック機構によって停車しておらず、駐車ブレーキも不 十分な操作だったとし、請求は棄却された。
工学的検討
本件車両は外国製で右ハンドル仕様、2人乗り、収納式ハードトップのロードスターであり、車高は1.3m と通常のセダンに比べて低い。乗車時は足を前方 に出し上体も後傾ぎみになる。一方、本来の左ハンドル 仕様を右ハンドル車に変更したタイプであり、AT シフ トパターン表示はセレクトレバーの左側にあり、レバー 越しにP位置を確認し難い配置であった。スポーツカー の駐車ブレーキは、膝を伸ばし前方へ踏み込む必要があ り、セダンの操作とは異なる。審理では争点の AT や駐 車ブレーキにPL法上の欠陥が認められず請求は棄却さ れた。現在は機電一体の進展に伴いセレクター位置や駐 車ブレーキの状態はインパネ等に明示されている。
近年、電動自転車や自動運転技術など電子化が推進さ れている中で、「人」と「機械要素・制御回路・センサー・ ソフトなどの統合」や「走行環境」などが調和した安全 の追求を願っています。
筆者
技術士 電気電子部門