土壁内竹組害虫発生事件

(自然産物の製造物責任を認めた事例)

経緯

1997 年3 月、y氏はa店に電話で桟(エツリ)用の丸竹15 束(青竹の状態)注文。代金45,000円。y氏の依頼でz社は丸竹を割ってコマイ竹(細く割った竹)にして竹組工事を実施し、y氏は竹組みの上に土を下塗し建物の内側については石膏プラスターで中塗りし、聚楽壁や漆喰で上塗りをした。約1ヵ月後に、建屋の外側や 2 階の一部は、ひびが入り下地の竹材が見える状態になり、石膏ボード等を貼りつけて外装した。さらに1998 年初夏から、本件建物に多数の虫が発生した。当該虫は乾燥竹材の著名な害虫と判明。本件建物や家具まで侵食する事態となった。専門家による害虫駆除でも害虫の根絶には至っていない。

判決

本件丸竹が建築資材としてコマイ竹として使用されるものとして販売した、本製品は。価値が付加された製品として販売されるのであるから、コマイ竹としての本件丸竹は、製造物責任法 2 条にいう「製造物」に該当すると認められる。長崎地裁(2002 年5 月):PL認容。購入者に対し1,913 万円支払え。二審福岡高裁判決(2005 年1 月):販売店の控訴棄却(丸竹で販売でも、建築資材用コマイ竹としての安全性を有した竹材を販売すべきである)

工学的な疑問

本件判決が、PL を認容するのであれば、販売時の、製品の仕様と品質に対する見解が明確に示されていない。丸竹、桟用竹、コマイ竹と、製品毎の防虫仕様も異なることへの配慮が全くない。また、購入者が製品を改造・追加工した場合、製品保証をしないのが通例であり、この点に対しも言及がなかったことを指摘したい。

筆者

井出川 洋
技術士 応用理学部門

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