「誤使用」判例勉強会
PL 勉強会が2016年7月から翌年4月まで10回、佐藤代表理事講師の下実施された。その中の1回のテーマは「誤使用」であり、講師方針により「最新PL関係判例と実務第3版」(升田純著、民事法研究会)に記載の判例に関して、参加者19名が各自1件ずつ下記方法で整理・取纏めを行った。
A)事故の概要、特に誤操作について注目
B)判決における評価(有責/無責含む)
C)機械安全原則に基づく使用方法の区分はどうか
①本来の使用 ②合理的予見可能な誤使用
③不相当な誤使用
→工学的判断(有責/無責含む)
D)米国不法行為法第3次リステイトメント基準の判断
(危険効用基準評価、RAD(更に安全な代替設計)等)
本勉強会の目的は、判例という実際の判決と理由に対して、上記広範囲な視点と技術者の経験からの目で再評価し、実施者の判断根拠を深める事であった。
有責/無責に関する判決と工学的判断の差を示す。
a)判決と工学的判断とが一致:11 件
b)判決無責で工学有責 :6 件
c)判決有責で工学無責 :2 件
上記内容・結果は、実施者の判断に基づくものであるが、b)が多いのは以下の意識の現れと思われる。
- 死亡/重傷となりえる「合理的予見可能な誤使用」を幼児、老人など弱者にも生じさせないことへの強い意識
- 「安全の基本は設計にあり」との強い意識
また、建築物内設備に関しては、多くの判例から安全に関する意識・行動の重要性に係わる法規制が甘いのではないかと思われた。
筆者
技術士 機械部門・総合技術監理部門