データ消失事故

インターネットを通じた企業の販売戦略の強力な道具として HP(ホームページ)が登場してきた。HP 運営には IT 環境の整備を必要とするので、専門サービス業者の設備を利用する例(ハウジング等)が多い。サーバを設置する場所やサーバや電源・通信回線等を自前で準備する必要がないので、多くの利用者の需要が生まれ、サービス業者も表現は悪いが雨後の筍のように存在するようになった。なかには設備のまた貸しやその再また貸しなどで素性の知れないサービス業者もいたりする。こうした状況のせいばかりとはいえないが、昨今の判例でもHP 運用でのデータ消失事件が増えている。

HP の運用にはサーバ提供者とシステム開発者とHP 運用者の三者が係わる。実際に事故が発生すると「どういう対策を取れば回避できたのか」が問題になる。責任とは予防策を取るべきだったということであり、これは当然に上記の三者いずれもの任務である。

データ消失は操作ミス・機器の経年劣化・システムのバグ・セキュリティ対策不備に加えてバックアップ体制や復旧手順の判断ミス等によっても生じる。時には意図的な不正行為が行われたりして事案を複雑にしている。これらの行為で過失責任は誰にあるのか明らかにすることになるが、予見可能性や注意義務違反といった視点に加えて当事者間の契約条件も考慮しなければならない。

また、責任分担が明らかになったとしても損害の査定においては復元・再構築といった費用だけではなく逸失利益とか精神的苦痛といった損害や過失割合の算定などの煩雑な作業が伴うことも多い。滅多にないことだが不注意によるミスと故意によるミスとの見分けが必要となる事例もある。

著者

橋本 義平
技術士 情報工学部門