スーパー銭湯のレジオネラ菌汚染
概要
2008 年2 月、前橋市にあるスーパー銭湯を利用したあとレジオネラ肺炎を発症し、呼吸機能に後遺症が残った被害者が、浴場経営者を訴えた件である。ただし被害者以外には病気の発生は見られていない。
争点
1) 原告が入浴した時に浴場は菌で汚染されていたのか、土木作業に携わる原告が、作業中に菌を吸引した可能性はないのか
2) 浴場の設備は公衆浴場法に定める安全基準を満たしていたか
3) 重度の喫煙歴がありそもそも虚弱であった原告が、新たに罹患したといえるのか、将来に対しても補償すべき後遺症があるのか
4)入浴と症状に因果関係があるとしても、賠償請求のどこまでを認定すべきか、被告の責任割合の相殺はありうるのか、
などが問われた裁判である。
裁判
概ね原告側の言い分がそのまま通り、やや減額された形で損害賠償が被告に対し命ぜられている。浴場の安全基準が法令に違反しており、1回だけ基準値を超えてレジオネラ菌が検出されたことを根拠としている。当該裁判は控訴されたが、和解で解決した。
問題点
被害者救済は達成されているが、原告と被告で対立する争点の検討が不十分であるにもかかわらず、被告側の主張は、ほとんど認められていない。昨今の浴場のレジオネラ菌汚染の多発を受け、科学的にみて異なる見解もありうる、枝葉的に発布された厚生省マニュアルに記載された内容を根拠としており、浴場経営者一般にとってもわかりにくい判断となっている。損害保険にとっては、レジオネラ菌が発生すると浴場経営者は多額の賠償が義務付けられるので、保険の果たす役割が大きいと考える。
著者
技術士 生物工学部門