ガス給湯器事故
事件概要
修理会社の従業員が、東京都港区のアパートに設置されたガス湯沸器の電気回路を改造した結果、2005 年 11 月に大学生が一酸化炭素中毒で死亡した事案であり、原告は、一酸化中毒での死亡者の親族4名、被告は、製造・販売業者、修理会社、ガス供給業者であった。
裁判
2012 年 12 月に判決があり、修理業者の不法行為責任を認めるとともに、明らかにPL 法上で重要な文言となる「製造・販売業者は、具体的な予見可能性、結果履行回避義務の履行可能性のいずれも認められ、予見すべき義務、回避すべき義務もあった」と示し、義務を履行していれば本件事故を防止できたと認められるとし、怠ったことによって生じた事故については、直接の不法行為責任を負うとした画期的な判決であった。これに続く事例として、21 名の死者が出るに至った事案に対し、2007 年10 月に警視庁が告発し、2010 年5 月に東京地裁は経営責任を認定し、元社長は有罪とされた。
工学的検討
安易に現行の湯沸かし器を利用し、排風機を取り付ける改造設計で製品化して起こった事故。旧来の熱電素子電源回路に、安全対策として商用電源回路を継ぎ足した二重電源が生じたが、端子を短絡することで旧来回路が成立し、安全対策が無効となった。排風機を停止していてもガス燃焼することとなり、一酸化炭素中毒事故が発生した。排風機と共通の商用電源で回路を統一すれば事故は回避できたと考えられる。PL 法の施行以前にガス湯沸かし器は製造されたため、本件は民法により裁かれたが、本質的にはPL 法上の「設計上の欠陥」と考えられる。
著者
技術士 衛生工学部門・機械部門