自然由来の土壌汚染
事件概要
2006 年 10 月東京都のマンション販売会社が、宮城県所有地約 3630m2を 9 億 2200 万円で購入した。土地購入後、マンション販売会社は、自主調査を実施したところ、基準値の4 倍のヒ素が確認された。マンション販売会社は宮城県に対して、土壌処分費に相当する5700 万円の支払いの訴訟を起こした。
裁判
2009 年 1 月仙台地裁での判決は、汚染の事実を認めた上で、自然由来の汚染を理由に県の瑕疵担保責任を否定した。汚染土壌の処分費については「必要不可欠なやむを得ない費用とは認められない」として請求を棄却し、マンション販売会社側が控訴した。
2010 年1 月仙台高裁での判決は、「自然由来の有害物質だったとしても、汚染土壌を処分するには通常以上の費用がかかるとし、県の瑕疵担保責任を認定した。汚染されていない場合の残土処分との差額を損害額と認定した。仙台高裁は、請求を棄却した一審仙台地裁判決を取り消し、県に5050 万円の支払いを命じた。
工学的検討
日本には火山が多く、様々な鉱脈・鉱床があるため、古くからトンネル工事現場などで有害金属が超過するケースがある。土壌汚染における自然由来とは、自然の岩石や堆積物中に含まれているカドミウム、鉛、六価クロム、水銀、ヒ素、セレン、フッ素、ホウ素およびそれらの化合物による環境汚染のことである。土壌汚染対策法は2002 年に制定され、2011 年改正時に自然由来による汚染も土壌汚染に対象となった。
この訴訟は、土壌汚染対策法の自然由来による汚染が対象になる前の裁判であるが、判決は瑕疵担保責任を認定した判決であり、妥当な判決と考える。
著者
技術士 上下水道部門・総合技術監理部門