食肉自動解凍装置バリ付着事件

事件概要

食品加工メーカーにおいて、原告(装置メーカー)が製作した食肉自動解凍装置で解凍した食肉に金属異物が付着しているのが発見された。本体を何度か解体、洗浄するも金属異物の流出はとまらず。被告ら(ポンプ、バルブメーカー)による調査結果、ポンプ、バルブの本体及び部品に残留バリ(表面加工の欠如あるいは不十分に基因する機械製品表面の残存物)が付着していることが判明。原告が、残留バリの存在するポンプ・バルブは不良品(欠陥商品)であり、被告らによる不良品の製造・販売によって損害を被ったとして提訴した。

裁判

2003年10月さいたま地裁の一審判決では、請求棄却。2004年11月東京高裁の二審判決では判決変更、汎用品としてのポンプ、バルブの残留バリは,製造上の「欠陥」にあたるとして製造物責任が認められた。2005年5月上告棄却。損害賠償額は、二審請求額419,747千円に対し、判決は、食品加工メーカーへの賠償金は認めず、過失相殺等により19,165千円に減額。

工学的検討

一審では製造物責任が認められず、二審では判決が変更になり、製造物責任が認められた事件である。ほぼ同じ証拠資料で口頭弁論や書類審査をしているのに、判決が異なった理由は、一審判決は、被告側弁護士の弁論を裁判官がほぼ採用して製造物責任を否定したのに対し、ニ審判決は、裁判官が証拠資料の事実を客観的に評価して、通常予見される使用方法であり、残留バリは欠陥であるとして製造物責任を認めたためである。残留バリは「欠陥」と決めつけるだけでなく、「部品として機能・性能上障害となる場合は除去しなければならない」との意見を採用したことが、判決の決め手になっている。

著者

安藤 克己
技術士 機械部門・金属部門・総合技術監理部門