コンタクトレンズの事故

概要

平成11年に含水性コンタクトレンズ(以下CL)を使用した原告 (当時22歳女性)が、左眼の角膜混濁や矯正視力低下等の後遺障害が残ったとして、販売会社と検診した医師を被告として不法行為に基づく損害賠償を求めた。大阪地方裁判所は、被告の告知・説明義務違反を認定し、また医師については治療に過失があったことを認めた(平成14年7月10日判決)。

理由

①本件のCLは、装用毎に蛋白質除去処理や消毒処理が必要な従来タイプであったが、被告はその告知をせず、洗浄液での洗浄のみで足りると説明した。しかし、このタイプのCLを販売する際には、蛋白質除去処理の必要性を告知・説明する義務があった。②医師は定期健診の際に、原告左眼の異常を認めたが抗炎症剤の点眼薬のみ処方し、さらに別の CL を提供して装用の継続を許可した。医師としてはCLの装用自体を中止すべきであり、また、適切な治療も行う義務があった。③原告は、CLの装用中に痛みを感じているのに使用を続けて症状を悪化させたという面があるものの、これと被告の告知・説明義務違反との過失相殺は相当とは認められない。

検討

本件CL はハイドロゲルであり、涙液中の蛋白質や雑菌等を内部に取り込むため、定期的な蛋白除去処理や消毒処理は必要であり、本件判決は妥当である。CLは薬事法で、人工骨や透析器と同じ「高度管理医療機器」のクラス3 に分類されている。これは、使用者が適正に使用していても、眼障害等のリスクの可能性はある。このことは販売者だけでなく使用者も認識して取り扱う必要がある。また、使用者としては購入の際には「医療機器承認番号」が付与されているCLか否かを確認する事もリスク回避の一助となるであろう。

著者

清水 隆男
技術士 化学部門

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