骨接合プレート破損事件

 上腕骨の骨折部分に装着したプレートが破損したことについて、医療関連商品を販売する業者を製造物責任法2条 2 項に基づく損害賠償請求で訴えた事件である。最終的には、参加人の病院も民法415条債務不履行で巻き込んだ三者での裁判となっている。
 原告が骨折し、病院で骨癒合補助用のプレートで固定し三角巾とバンドパスによって外部を固定する治療を行っていた。原告は糖尿病で骨の接合が難しい状態にもかかわらず、三角巾とバンドパスを外し医師の指示にも従わず診療も受けていなかった。その後、音がするようになり再受診して、プレートが破損していることが判明した。そこで、原告はプレートの業者を訴えたわけである。その後参加人として病院が加わってきたので、適切な治療を怠ったということで、債務不履行で訴えている。この裁判において、原告は技術的に大きな間違いを3つしている。1 つ目はプレートに破断限界強度があることを認識していない点、2 つ目は鋳造欠陥という製法に基づく主張、3 つ目は欠陥成分の解析方法である。材料には破断限界強度があり、それに基づく適切な使用方法があった。使用された材料は鋳造で製作されたものではなく強度に影響する鬆(す)は存在し難かった。欠陥の異物元素も表面分析結果であり、材料内部の組成を示さない点である。これらを否定され敗訴となっている。
 私たちが調査するときも材料の物性や製法などに基づく特性などに着目して行うわけだが、先入観で製造方法を決めつけたり、分析結果を都合よく解釈してしまうことは行いかねない。このような行為が、裁判においては致命的となるのだと改めて考えさせられた。

筆者

渡邉 喜夫
技術士 金属部門・総合技術監理部門