給食食器破片視力低下事件
事件概要
国立小学校3年生に在学していた女児が、給食食器片づけの際、落とした積層ガラス製食器の破片を右眼に受けて角膜裂傷などを負い、視力が0.1まで低下したため、同食器の製造会社及び販売会社に対して製造物責任に基づき、国に対して国賠法上の責任の損害賠償を求めた。事件番号:奈良地裁(平12(ワ)513号)
判決
一部認容。被告は原告に対して約1千万円を支払え。国に対する請求を棄却する。
根拠条文
製造物責任法第三条(認め)国賠法第一条第1項、第二条第1項(否定)
・本件食器につき、設計上における安全面での構造的な問題は認められないから、設計上の欠陥は認められないが、本件食器が破損した場合の態様等につき十分な表示をしなかった欠陥のために、本件食器の危険性が十分認識されないまま給食食器として採用され使用されるに至ったから、表示上の欠陥と本件事故の結果との間には相当因果関係が認められる、として一部認容された。
工学的検討
積層ガラス食器は軽量、高強度の特長を持つ。二種類の異なる熱膨張係数のガラスで、断面方向に3層の積層構造にし、外側と内側のガラスの膨張差を利用して、製品に残留応力(内部に引張応力、外部に圧縮応力)を持たせ、外部から大きな力がかかっても耐えられるようにして、機械的強度を高く持たせている。積層ガラス製食器が落下により破壊すると、鋭利な破壊片になり、破壊片が広範囲に飛散する。設計上の欠陥は認められないが、十分な表示をしなかったという表示上の欠陥が認められた(製造物責任法第三条)。
筆者
技術士 化学部門・総合技術監理部門